「きー君のご両親に気に入ってもらいたいからね」

 璋子さんの言葉で理解する。璋子さんを家に連れて行くとはつまり、父母に璋子さんを会わせることになるのだ。

「璋子さん、その、つまり」
「味方は増やすに越したことないわ」
 近い未来の僕たちの関係を想像した僕を、見透かし、またはぐらかすように、璋子さんはおどけて言う。やはりまだ、酔っているんじゃないか。

 飲みかけだけどお土産はこれで良いよね、と璋子さんは貰い物の越乃寒梅を包む。笑い上戸の父さんは大喜びだろう。
 コーヒーと鞄を持って、璋子さんは玄関を出る。戸締まりを確認し、僕も外へ出て璋子さんの部屋の鍵をかけた。

 駐車場で、僕の愛車は既にエンジンが掛っている。けれども運転席は空いていて、璋子さんは助手席で早々とシートベルトを締めていた。
「出発!」

 はい、仰せのままに。