真夜中にはっと目が覚めた。部屋の常夜灯で見える視界に、璋子さんの姿がない。僕は慌てて体を起こした。

「……常夜灯?」
 ああ。寝惚けた頭を振る。

 璋子さんはいつも、真っ暗にして寝る。それは恥ずかしさからであり(それを璋子さんは絶対口にしない。僕はそんな璋子さんをとても可愛く思う。)、今明かりが点いているのは璋子さんが起きているからだ。

 僕は脱ぎ散らかした服を纏い、寝室を出る。浴室からの光がリビングに漏れていた。僕はリビングの照明のスイッチを入れて、改めて時計を見る。三時過ぎ。

*

 学生時代の友人との飲み会を終えて、璋子さんはほんのりと頬を朱に染めて帰って来た。
「ねえ、知ってる? こういうのを不法侵入って言うのよ、きー君」
 開口一番、璋子さんは僕に不審な目を向けた。
「ここの鍵をくれたのは璋子さんですよ、だから合法です」
 僕は玄関のドアを閉じて鍵を掛け、バラバラに脱がれたハイヒールを揃える。