父上のお決めになったことには従わねばなりません。
「志都よ」
 城下に広がる田は黄金色に輝き、天はどこまでも高い、そんな日です。鳶の声がひどくのどかに聞こえます。
「お前ももう十七」
 千吉はこの青空の下で、額に汗して仕事に精を出しているのでしょう。実りの時期は近いのですから。
「隣国の若君は二十三」
 千吉。
「領内の稲の刈り入れが一段落したら、お前の婚礼を皆で祝おう」

 実りの時期は、近いのですから。




「おめでとうございます」
 隣に座る千吉は、優しい眼差しをいつものようにわたくしに向けます。
「その若君は、顔立ちも優れ、頭も良く、民からもよく慕われていると聞きま
す。姫様も必ずやおしあわ」
 わたくしは千吉の頬を叩きました。情けない音が、馬屋の天井へ抜けていきました。