許してよ。

 あたしはあんたに会いに行くんだ。


 可哀相じゃないか。綺麗綺麗ってもて囃されてそやされて、真っ赤になって、散って行く。まるであんたみたいだよ。

 いつだか相手した文士の先生がね、あたしに教えてくれたんだ。緑の葉っぱは木のために、せっせせっせとご飯を作る、秋になると木が冬を越したいからそのご飯を貯め込んで、端っこでひらひらしている葉っぱなんかにゃ目をくれない。葉っぱは悲しくなって赤くなる。

 木のために尽くして尽くして散っていく、そんな葉っぱがあたしには、オクニのために尽くして尽くして真っ赤な血に染まって散ったんだろう、そうあんたに思えて仕方ないんだ。


 あたしが見たのは、あんたの戦死報告の、薄っぺらい一枚の紙切れ。

 あんたは約束を守る男だった。帰って来たらあたしをここから出してくれる、あんたのお嫁さんにしてくれる、その約束はどうするのさ。あんたのことしか考えられなくなっちまったあたしは一体、どうすりゃ良いのさ。ねえ、あんた。


 庭に沢山植えてあったこの木は全部、男衆に抜いてもらった。そこに置いてあるだけで、もう燃えているみたいじゃないか。

 そうしてあたしは、マッチを擦った。あの薄い紙切れに火をつけて、乾いた枝に火がついて、ほうら、赤い葉っぱも何もかんも真っ赤っか。

 あとは赤いべべ着たあたしがさ、この火の中に飛び込むんだ。そこをあんた、雲の上から良く見ておくれ。あたしは細おい煙になって、あんたのとこまで昇っていくよ。


 火に包まれたもみじはとっても、とっても綺麗な赤いいろ。

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タイトル:もみじもゆ
作者:二木ハルカ