∠
テルを見て、別の意味で相手は戸惑いながらも、顔色を変えた。
彼らの探している人間ではなかったが、別の意味で問題だった、というわけだ。
自分を見て、敵意をむき出しにする人間。
テルは、分かった。
これが、月の連中か、と。
反射的に全員を見渡したが、白い髪はいない。
ここにいるのは、太陽に対して憎しみはもっているものの、月の力を失った連中だ。
トーほどの髪を持つ人間は、よほど稀有なのだろう。
だからこそ、彼は自分の血脈を捨て、好きなように生きられるのだ。
誰も、彼を止められないのだから。
トーという存在とは、あまり近しい付き合いではない。
時折、キクの道場に現れるのと、その素性を父から聞くくらい。
あと。
夜に聞こえる歌は、彼の唇によるものだ。
夜鳴鳥がいる。
テルの認識は、その程度だった。
トーの歌は心地よいが、彼の心を揺さぶるには切ない響きすぎる。
微妙な心の浮き沈みを、しっかりと汲み取れるほど、テルはまだ極めてはいないのだ。
自分には、足りないものがある。
トーの歌を聞きながら、そう思った。
キクやウメの言うところの、『侘び寂び』、なるものだ。
物悲しさ、枯れた美しさ。
そんなものを習得するには、あと20年は必要だろう。
テルが、月の一族のことを考えている間に、戦いは進む。
豪快なビッテの技からすり抜けた小物を、エンチェルクが彼の手前で封じ込める。
初めて、彼女の実戦を見た。
キクの教えを従順に守る、型どおりの動き。
面白みはないが、エンチェルクはそんなものよりも、確実性を重視している。
早く、成長したいものだ。
テルは、ただ待つという苦行を強いられながら、そんな二人の技を見ていた。
こんな子供の姿では、ただ守られていなければならない。
何とかこらえてはいるものの、やはり自由に動くビッテやエンチェルクの長い手足を見ると、うらやましくも思うのだ。
「やれやれ…野蛮だな」
ヤイクにとっては──戦いそのものが、面倒くさそうだった。
テルを見て、別の意味で相手は戸惑いながらも、顔色を変えた。
彼らの探している人間ではなかったが、別の意味で問題だった、というわけだ。
自分を見て、敵意をむき出しにする人間。
テルは、分かった。
これが、月の連中か、と。
反射的に全員を見渡したが、白い髪はいない。
ここにいるのは、太陽に対して憎しみはもっているものの、月の力を失った連中だ。
トーほどの髪を持つ人間は、よほど稀有なのだろう。
だからこそ、彼は自分の血脈を捨て、好きなように生きられるのだ。
誰も、彼を止められないのだから。
トーという存在とは、あまり近しい付き合いではない。
時折、キクの道場に現れるのと、その素性を父から聞くくらい。
あと。
夜に聞こえる歌は、彼の唇によるものだ。
夜鳴鳥がいる。
テルの認識は、その程度だった。
トーの歌は心地よいが、彼の心を揺さぶるには切ない響きすぎる。
微妙な心の浮き沈みを、しっかりと汲み取れるほど、テルはまだ極めてはいないのだ。
自分には、足りないものがある。
トーの歌を聞きながら、そう思った。
キクやウメの言うところの、『侘び寂び』、なるものだ。
物悲しさ、枯れた美しさ。
そんなものを習得するには、あと20年は必要だろう。
テルが、月の一族のことを考えている間に、戦いは進む。
豪快なビッテの技からすり抜けた小物を、エンチェルクが彼の手前で封じ込める。
初めて、彼女の実戦を見た。
キクの教えを従順に守る、型どおりの動き。
面白みはないが、エンチェルクはそんなものよりも、確実性を重視している。
早く、成長したいものだ。
テルは、ただ待つという苦行を強いられながら、そんな二人の技を見ていた。
こんな子供の姿では、ただ守られていなければならない。
何とかこらえてはいるものの、やはり自由に動くビッテやエンチェルクの長い手足を見ると、うらやましくも思うのだ。
「やれやれ…野蛮だな」
ヤイクにとっては──戦いそのものが、面倒くさそうだった。


