アリスズc


 四人いた男はみな骸になった。

 三人は、リリューが。

 一人は──モモが。

 初めて、人を斬った。

 何かを飛び越えた感覚を、リリューがゆっくりと噛みしめていると、モモが地面に膝をつく。

「な…何をしている?」

 まだ、うまく歯の根があわない声で、ホックスが彼女に問いかけた。

 モモは、敵の屍に手を合わせていたのだ。

 一瞬、そこに伯母がいるかと思ったほど、彼女は彼女の母に似ていた。

 容姿は、全く似てはいないというのに。

「安らかに眠るよう、祈っています」

 凛とした、声。

 この行為を、決して何人も咎めることは出来ないのだと。

 リリューは、自分の中で噛みしめて血肉にしようとした。

 モモは。

 相手の魂に祈りを捧げることで、自分を赦したかったのだろう。

 人を殺すという毒を飲んだ二人は、まったく違う結論へとたどり着いたのだ。

「もはや屍なのだ…恨み続けなくてもいいだろう」

 ハレは、ホックスの震えを止めるように、軽く腕を叩く。

「は…はぁ…」

 気抜けしたように、彼は納得したのかしていないのか分からない声を出した。

「人を…探しているようでしたね」

 立ち上がったモモが、膝の汚れを払いながら呟く。

 ああ、そういえば。

 確か、彼女くらいの年の娘を探しているとか。

 この男たちから、逃げたのだろうか。

 捕まっていなければいいが。

 リリューは、そう思った。

 捕まえた娘に、優しくするような男たちには見えなかったからだ。

「もしかして…」

 しばし考え込んだ後、ホックスが唇を開いた。

 かなり、震えは止まってきたようだ。

「もしかして…さっきのが、『月』の人間というものなのか?」

 誰もが、はっきりと音にしないことを──彼は口にしたのだった。