アリスズc


 桃は、旅に出た。

 旅の間、エインはとてもいい相棒だった。

 やはり、どうあってもうまく弟に頼ることは出来なかったが、それはもう体質としか思えない。

 父と再会しても、やはりその体質は余り変えられず、それどころか屋敷の人間からお嬢様扱いされ、着飾らされ、落ち着かないことこの上なかった。

 見た目は、明らかなるテイタッドレックの血が流れている自分だが、やはり自分は山本なのだと、よくよく思い知ったのだ。

 これは、早々に逃げなければ。

 そんな桃の心に気づいただろうエインに、強く引きとめられた。

 帰らないで欲しいと。

 そして。

「私の妻になってくれないか?」

 誠実な、求婚を受けた。

 トーの恋心を知ってから、桃は自分の鈍さにも気づき始めた。

 そのおかげか、旅路の間でエインの心にもうっすらと気づくことが出来たのだ。

 だから、思ったより驚かなかった。

「ありがとう、でも……やりたいことが多すぎて、あなたの隣に座れないの」

 だが、桃にとってエインは素晴らしい相棒ではあっても、それより上に考えることは出来なかった。

 もしかしたら、これから長い時間をかければ、そういう道もあったかもしれない。

 しかし、彼女は決めてしまったのだ。

 貪欲な道をひた走ると。

「あの母にして、この娘ありだな……」

 それが、エインの最後の捨て台詞だった。

 馬鹿だなあ。

 苦く切ないエインの後ろ姿を見送りながら、桃は少しだけ微笑んでしまった。

 彼の言ったそれは。

 褒め言葉ではないか。

 さあ。

 イエンタラスー夫人の屋敷へ寄り道をしてから。

 都へ帰ろう。