アリスズc


 朝食の席。

「じれったい歌でしたわね」

 ロジアは、やや辛辣に。

「素敵な歌でしたね」

 テテラは、優しげに微笑んで。

「……眠いな」

 伯母は、首をこきこきと左右に動かしながら。

「……ふわぁ」

 レチはあくびをかみ殺し。

「……」

 リリューは、ただ真顔で座り。

「……」

 エインは、不機嫌そうに水を飲み。

「……」

 母は、いつも通りの静かさで。

 夜明け前に仕事に出て行った伯父を除いても、これだけの大所帯と化した食事の席で、みながみな違う反応で座っている。

「まあ、あの歌のおかげで、私はジロウと二人きりの夜を過ごせましたので、よしとしますわ」

 ちらりと、ロジアの視線が伯母に飛ぶ。

 同室のはずの伯母は、一体夜にどこへ行ったのか。

「あんな歌を聞かせられては、つがいの身の一人寝はつらくて当然ですわね……をほほ」

 そんな疑問に、淫靡な闇色のカーテンをかけようとする彼女の言葉に、二つの咳払いが飛んだ。

 エインと母だ。

 この中では、一番常識的な二人かもしれない。

「まあ、ロジアったら」

 テテラは、困ったように微笑むし、レチは何故か赤くなるし、伯母は苦笑の限りを尽くしている。

 昨夜のトーの歌は、あちこちに飛び火したようだ。

「あの白いのは、なかなか大物のように見えてよ。お買い得ではないかしら?」

 まったく自重しないロジアに、またしても二つの咳払いが飛んで来る。

 あー、うー。

 桃にとって、朝っぱらから随分と疲れる食事の席となったのだった。