アリスズc


 ひとつ目の轟音が響き渡った時、エンチェルクは廊下へと飛び出した。

 もうもうと舞い上がる埃は、廊下に立ち込めている。

 そんな中で、激しく咳き込む音が聞こえた。

「大丈夫ですか!?」

 西側の客間には、太陽妃がいたのだ。

「え…ええ…なんとか…けほけほっ」

 掠れる声の返事に、とりあえず胸をなで下ろす。

「とりあえず、こちらへ」

 埃の中を、エンチェルクは手探りで進んだ。

 外の空気を感じるということは、外壁が壊されるほどの衝撃があったということ。

 そんなむき出しの場所に、太陽妃を置くわけにいかなかった。

 もう一度攻撃されれば、今度は建物の内部が破壊されかねない。

 伸ばした手が、太陽妃の衣服に指が触れた。

 その次の刹那。

 壁がなくなったことにより、前よりもはっきりと轟音が響き渡った。

 あっ!

 二発目だ。

 さっきの衝撃が、もう一度来るに違いない。

 エンチェルクは、ただ無我夢中で彼女の掴んだ衣服を引っ張った。

 そして。

 西を背にして、自分の身体に抱え込む。

 小さな太陽妃は、すっぽりと彼女の身体の内側におさまった。

 よかった。

 本当に、小さい方でよかった。

 こんな女の身でも、包んでお守りすることが出来るのだから。

 強烈な風が、周囲の埃と共にエンチェルクの背に迫ったのが分かった。

 ただただ、衝撃に備えた。

 なのに。

 強力な風に背を押されはしたものの。

 爆音は。

 聞こえなかった。