アリスズc


 喉に突きつけられる刀に力がこもった瞬間。

 桃は、ユッカスを睨み返した。

 いま、死がそこにある。

 それを、はっきりと感じた。

 ああ。

 生きなければ。

 死にたくない、ではない。

 まだ、生きなければ。

 伯母は、何故自分を庇ったのか。

 自分が、伯母より若いからだ。

 これから先の時間を、自分の方がより長く生きるからだ。

 そんな伯母の思いを、無にしてはならない。

 あきらめるのは──死んだ後でいい。

 刀を使い慣れていない相手だ。

 掌で横から切っ先を弾き飛ばせば、勝機があるかもしれない。

 たとえ、それで喉が裂けようとも、生き延びられるかもしれない。

 桃が、右手を動かそうとした。

 まさにその時。

 3つのことが、起きた。

「俺は…誰よりもお前を殺したかった。もう死ね」

 ユッカスの後ろから伸びた腕が、彼の首をがっちりと締めた。

「ぐっ!!!」

 続いて。

「……!!!」

 刀が、ユッカスの手から落ちた。

 短剣が、彼の腕に突き刺さっていた。

「やっぱり…お前がいると自由じゃない」

 もう一人、いた。

「お前…ら」

 ユッカスの側にいたのは、子どもが二人と大人が二人だったではないか。

 子どもたちは、彼の盾となり倒れた。

 残る大人二人は。

 イーザスと──カラディだった。