アリスズc


 太陽妃は、本当に素晴らしい目を持っていた。

 実際に、子どもたちの到着を待ち構えてみて、それがよく分かったのだ。

 桃たちには、準備と心構えの時間が多く与えられ。

 そして、何より。

 彼らに、準備の時間を十分に与えなかったのだ。

 一番の原因は、火を隠すためにそれぞれが持っていなかったこと。

 火種を鉄の箱に入れ、運んでいたのだ。

 その箱を開け、一人ずつ火を取ろうとした時。

 一番年上でも10歳をこえたばかりの彼らの一部は、桃とエインによってその成長を終えることとなった。

 太陽妃がいなければ、これほど見事に爆弾の使用前を急襲することは出来なかっただろう。

 それでも最初に火をもらうことの出来た子どもたちは、己の使命を全うしようとした。

 桃とエインを爆弾で距離を取らせた隙に、一人が武の賢者の屋敷に向かって駆け出したのだ。

 追わなかった。

 その必要がなかったからだ。

 何故なら。

 そこには。

 伯母が、いたから。

 建物から、何の爆発音も聞こえてなどこなかった。

 彼らは──大敗したのだ。

 実戦投入されるには、若すぎた。

 多くの技術や力を手に入れる前に、その命を終えたのだ。

 この国にとっては、幸いだった。

 ただし。

 桃は、気を抜いてなどいない。

 まだ、何も解決していないのだ。

 諸悪の根源が、残っている。

 ユッカス!

 小さな屍の返り血を浴びた桃は、虚空を睨んだ。

 子どもたちだけを送り込み、どこかでその男があぐらをかいている姿は想像できなかった。

 きっと、そう遠くないところにいる。

 その時。

 ドォォォォン!

 都中に聞こえるほど、大きな爆音が上がった。

 振り返ったが、屋敷は無事だ。

 そう思った次の瞬間。

 ドガァァン!

 屋敷の左端が、火花と轟音をともなって──崩壊した。