アリスズc


 キクの部屋は、4人の女性と2人の男がいるため狭く感じる。

 女性は、キク、ウメ、ロジア、エンチェルク。

 男性は、ヤイクと──ジロウだ。

 言葉もしゃべれぬ赤子は、ロジアの髪をよだれでべとべとにしながらも、会合に参加していた。

「殿下たちが討伐に出ている間、都の守りが重要になる」

 この会合を手配した男は、軍令府の人間にではなく、女たちにこんなことを言い出す。

 いや、軍令府にはこんなことをいちいち言う必要はないだろう。

 危険に対処する、最前線の役所なのだから。

 しかし、そんな彼らでも、敵勢力に関して全てを把握しているわけではない。

 月の一族、そして──異国人の勢力。

「その守りにおいて問題なのが…うちの叔父上だ」

 ちらりとロジアを見たのは、前に天の賢者が彼女にちょっかいをかけようとしたことを思い出したのか。

「もしかしたら、ウメのところには無茶なことをするかもしれんからな」

 異国人の勢力に関して言えば、ウメのところにはエサがある。

 テテラだ。

 そのため、都にはイーザスが潜伏しているのだ。

 そんな彼女を、天の賢者はおさえようと言うのか。

 潜伏している男を、あぶりだすために。

「外に出る際は、常に私の娘がついています」

 ウメは、そんなヤイクの心配には同調しなかった。

 何も知らずについているのではなく、モモは分かっているとでも言いたげに。

「引き続きそうしてくれ…殿下のいない間に、叔父上が何をやらかすか、私にも分からないのだよ」

 異国人の存在そのものが、天の賢者にはお気に召さないようだ。

 ヤイクが手を焼いている様子は、珍しく見えた。

 そんな男に。

「もし…万が一のことがあったら」

 ウメが。

 薄く微笑む。

「その時は…あなたが男を見せればいいことです」

 微笑みの裏側から飛び出す、厳しい針。

 その針の先を見るのは慣れているかのように、ヤイクはやれやれと肩をそびやかした。