アリスズc


 人々の中から、無精ひげの男が近づいてくる。

「カラディ…」

 反応を返したのは、桃よりもテテラが先だった。

「あなたたちは…一体何をしているの?」

 問い詰める言葉に、カラディは面倒くさそうに頭をかく。

「テテラフーイースル…あんたは帰った方がいい。こいつらといると、悪いことになる」

 相変わらず、歯に衣着せないしゃべり方だ。

 その歯は、すぐさま桃に向けられた。

 何か言おうとして、近くのテテラが気になったらしく、ついてこいと顎で呼ばれる。

 少し離れたところ。

「一人…逃がしただろ?」

 カラディは、頭が痛いとばかりに自分の眉間を押さえた。

「よりにもよって、ユッカスだ。しつこさも、あの国への忠誠も天下一品だぞ」

 ただの忌々しい悪口のように思える。

 だが、これからこの国と桃の敵になる相手が誰なのか、それを教えてくれているように感じた。

 六人の子どもたちの中の、一人。

 桃の出会った、四人目の異国人。

「でも…顔に傷をつけたわ」

 どれほど自分を呪ったとしても、顔を合わせればすぐに分かってしまう。

 この国の兵士に、傷の男を疑うよう仕向けることだって、ヤイクならば出来るだろう。

 カラディは。

 桃の腰を見た。

 彼女の刀を。

「爆弾相手に、こんなもんで戦って…ユッカスを傷モノにしたか」

 あーあ。

 彼は、心底いやそうに声を吐いた。

「嫌な血だな、お前らの血は」

 カラディが、背を向ける。

「お前が…死ねばいいと思ったのに、な」

 彼は、行ってしまった。

 おそらく、どこかへ行方をくらますのだろう。

 ユッカスに、見つからないように。

 桃は。

 最後にもらった言葉に、少なからず衝撃を受けていた。