アリスズc


 リリューの戻りは、遅かった。

 遅かった理由は、その姿を見ればよく分かった。

 その背に。

 テテラをおぶっていたのだ。

 こんな夜にも関わらず、彼女はロジアを心配して出てきた。

 その姿を見て、リリューは放っておけなかったのだろう。

 彼女を下ろし松葉づえを手渡すと、彼女はいまなお燃える屋敷を、悲しげに見上げる。

 真実を。

 テテラに、真実を話したくてしょうがなかった。

 だが。

 彼女は、異国の人間に近い女性だ。

 そんな人に、ロジアの真実を告げることは、この日の出来事を全て無駄にしてしまうこと。

「都へ…来るといい」

 従兄は──やはり、あの伯母の息子だ。

 打算ではなく本能で。

 ぼんやりとした外側ではなく、まっすぐな中心を。

 しっかりと掴んで、差し出すことが出来る。

「都には…あなたの真実があるだろう」

 片足で、長い旅など難しいはずの人に、何故迷いなくそんな言葉が言えるのか。

 その先に、何があるのか分からない人に、だ。

 本当は。

 それを言いたかったのは、事情を一番知っている自分だ。

 リリューは、これまでテテラに会ったことなどない。

 彼女が、どういう境遇で、ロジアとどういう関係だったのかも知らないはずなのに。

 もしかしたら、道中で話はしたのかもしれない。

 そうであったとしても──桃は、悔しかった。

 いや、恥ずかしかった。

 異国人とつながっているから、ロジアのことを教えるわけにはいかないと、そう考えていた自分に、だ。

 もっと他の方法を、模索することも出来たのに。

 安易で、見えているものをとっさに掴んだ自分を恥じた。

「一緒に、都に行きましょう!」

 だから。

 桃は、テテラに呼びかけた。

 どれほど時間がかかっても──彼女をロジアに再会させたかった。