アリスズc


「飛脚が来たぞ」

 胃の痛い対面が何とか無事終わり、部屋に戻ると、伯母が紙を持ち上げて見せた。

 居場所を、母に飛脚で連絡していたので、これまでも何度かやりとりはしていたのだ。

 封を切ると、中から手紙が2通出てきた。

 1通は、読めない文字で書いてある。

 日本語だ。

 伯母宛てだろう。

 次郎を抱えている伯母に、それを渡す。

「ああ、これは私宛てではあるが、半分はお前宛てだ」

 読みながら、伯母は不思議なことを言った。

 桃宛てだというのならば、もう1通の方に書けばいいのに。

 そう考えて、あっと気づいた。

 この国の人間が、誰も読めない文字。

 それは、秘密の情報のやり取りに、この上ない威力を発揮するではないか。

 ロジアの屋敷は、あくまでも仮の住まい。

 いつ移動するかもしれない。

 しかも、ここは他国の勢力のド真ん中かもしれないのだ。

 そんなところに、分かりやすいこの国の文字で、秘密の情報を送るわけにはいかないではないか。

「テルとハレが無事帰りついて、都に祭りが始まるようだな。それから…祭りを待たずに、リリューとエンチェルクとヤイクルーリルヒが、こちらの町へ向け、旅立ったそうだ」

 いよいよ。

 ロジアの話は、悠長に構えていられなくなった。

 夕日には話をしなかったが、テルの名代であるヤイクには、彼女はありのまま話さなければならないだろう。

 こちら側への取り込みを。

 桃は、そう進言するつもりだった。

 彼女には、その可能性があると、そう彼女は信じたかったのだ。

 そんな時。

 ノッカーが鳴った。

「少し、話が出来るだろうか?」

 クージェだった。