アリスズc


 時は、来てしまう。

 都に向けて、旅立たねばならない日。

 ハレは、弟に言った。

「7日だけ…出発を遅らそう」

 テルは、それを──拒まなかった。

 7日。

 テルとハレより、それだけ遅く生まれた女性のために。

 まだ、旅は終わっていないのだ。

 オリフレアもまた、都へ入らなければならない。

 それぞれ、別々に。

 だから、兄弟で決めた。

 最初にハレがゆく。

 少し遅れて、オリフレアが旅立ち。

 しんがりをテルが行く。

 たった一日ほどの距離を、彼らは女を守って進むのだ。

 そうと決まれば、もはや心配などない。

 オリフレアには、あの男がつく。

 テルにはビッテと、この日のためにエンチェルクが駆けつけていた。

 そしてハレには、リリューと──コーも来てくれたのだ。

 誰ももう、このイデアメリトス達には、触れることさえ出来るまい。

「夜に旅立った私が、最初に都に入るのか」

 複雑な気持ちだった。

「行きましょう」

 ホックスが、すっかり軽くなった身で言う。

 彼が、旅に持ち出した荷物は、ほとんどをここに置いていくのだ。

 都に入ってさえしまえば、後からいつでも取りに来ることが出来る。

 勿論、本当の意味で身軽になったのは──リリューなのだが。

「モモがいないのが、残念だな」

 港町で仕事をしているだろう彼女を思って、ハレはコーを見た。

「大丈夫っ。桃なら、きっと大丈夫だよ」

 彼女は、弾けるように微笑んだ。

 ウメに課せられた鎖は、すでに引きちぎられた。

 彼女は、この国の言葉の全てを手に入れたのだろうか。

 そんな彼女と。

 明るい朝日の中。

 ハレはついに──最後の領主宅を出たのだった。