アリスズc


「ハレイルーシュリクス!」

 ハレは、一瞬それが幻聴ではないかと思った。

 何故ならその声は、窓の外から聞こえてきたからだ。

 驚いて、バルコニーの方を見ていると。

 にゅっと。

 手すりから手が出てきた。

 右手、左手。

 そして──白い、頭。

 次の瞬間。

 ひらっと、しなやかな女性の身が、バルコニーに降り立ったのだ。

「コー!」

 大きな声を出してしまった自分に、ハレはすぐには気付けなかった。

 彼女が来たことも驚いたが、まさかそんなところから現れるとは思わなかったのだ。

「エンチェルクイーヌルトに、連れて来てもらいました。いろいろと挨拶をしなければならないと言われましたので、先に会いに来ました」

 美しい、みやこ言葉。

 だが、何も変わっていない爛漫な笑顔。

 トーに習ったのだろうか──高いところへ登ってくる技術。

 彼もまた、よく宮殿の屋根の上にいたではないか。

 ああ、ああ。

 ハレは、あふれ出る愛しさを、どうしても止められなかった。

 いつもなら、先に抱きつこうとするのはコーの方だ。

 だが。

 今日は。

「ハレイルーシュリクス?」

 少し驚いている。

 彼女の身体を。

 抱きしめてしまった。