アリスズc


 リリューと、向き合う。

 お互いに、真剣を構えて。

 桃は、まだ怖いままだった。

「リリュー…」

 伯母が、彼女の息子を呼ぶ。

 少し、咎める瞳だった。

 それまで、リリューには迷いがあった。

 抜いて構えてはいるけれども、桃に刃を向けることを望んではいなかったのだろう。

 だが、伯母の言葉は、リリューの瞳を変えた。

 覚悟を。

 覚悟を決めさせたのだ。

 きちんと、桃に向き合うのだ、と。

 そのまっすぐな瞳と刃の切っ先が、自分に向けられる。

 伯母が、何を自分にさせたいのか分からない。

 桃は、まだ戸惑ったまま。

 迷ったまま。

 リリューは、動かない。

 伯母ももう、何も言わない。

 このまま、きっと時間は動かないのだ。

 桃自身が、覚悟を決めるまで、この親子は根気強く待ち続けるのだろう。

 リリューの粘り強さは、よく分かっている。

 子供の頃から、この従兄はひたすらに木剣を振った。

 誰よりも長く、誰よりも多く。

『ダイに似たんだよ』

 伯母が、そんなことを言っていた。

 似るって。

 桃は、その時よく分からなかった。

 リリューは、二人の本当の子ではない。

 なのに、似ることなんかあるのだろうか。

 でも。

 覚悟を持って構えているその姿は。

 伯母に、とてもよく似ていた。