アリスズc


「キクは、珍しくてつい拾ってしまいましたわ」

 応接室は、珍妙な部屋だった。

 珍しいものや、ガラクタかと見まごうものが置かれ、統一感があったはずのロジアの雰囲気を、台無しにしていたのだ。

 奇妙な形の動物の彫り物とか、へったくそな絵とか。

 出されたお菓子も、何だか微妙な味がする。

 そんなカオスな空間で、桃はロジアと二人で話をしていた。

 自分が話したいと思っていたし、向こうもそうだったようだ。

 伯母は、ひと眠りすると部屋に戻ってしまった。

「珍しさの塊でしたの、分かるでしょう?」

 腰に刀を下げ、山追の子を連れ、そして出産寸前に旅の妊婦。

 その情報を聞かされただけで、確かに珍しさ大爆発だ。

「山追の子は、めったに山から出されることはないのに、もらいうけられるなんて羨ましくて」

 そして。

 ロジアは、桃に言ったことと同じようなことを、伯母に言ってしまったという。

『その山追を、私にくれるのなら…』

 勿論、妊婦の伯母は、荷馬車を飛び降りようと──ああ、伯母さま。

 桃は、心の中で照れてしまった。

 妊婦なことを考えると、尚更無茶苦茶なのだが、伯母と同じ行動を取ったといわれると、ちょっとだけ嬉しかったのだ。

「そうしたら今度は、尾長鷲を連れた娘に出会うし…あなた方の血は、一体何ですの?」

 呆れながらも、少しの羨望がその声にはある。

「はぁ…でも、ロジアさんも風変わりみたいですよね。飛脚問屋の御主人だと伺いましたが」

 さすがに愛人の方を、口に出すことは出来なかった。

 そして、極めつけのこの部屋を見回してみせる。

 とても普通の感性では、この空間は作れないだろう。

「仕事は、所詮仕事に過ぎませんわ。情報を集め、正しく使えば、自然と成功するものでしてよ。この部屋は…」

 そこで、彼女の言葉が一度止まった。

「この部屋のものは…私の子供たちからの贈り物ですわ」

『子供たち』──その表現には、何か微妙な音が含まれている。

 何だろう。

 少し、悲しそうに聞こえた。