アリスズc


 伯母は、ことわりを教えてくれた。

 理、というものを。

 その中心に、「金」や「物」などの欲を置くことは、理ではないと自然に習ったのだ。

 欲は、人を高めない。

 そう伯母は、言葉以外で教えてくれたのだ。

 そんな理を持つ人々が、桃の周りには沢山いて。

 いまにして思えば、ホックスでさえ、旅の終わりには勉強への欲以外の理が、確かに芽生えていた。

「稼いだお金は…何かに使うんですか?」

 金や物は、ただの手段に過ぎない。

「好きに生きるのに使うのさ。いいだろ? 俺の稼ぐ金を俺が好きに使ったって」

 だが。

 それを、目的にしたら──理と決別だ。

 桃は、にこりと笑った。

 母のように、微笑みたいと思ったのだ。

 要するに。

 限界だった。

「私とあなたは、決して相容れないでしょう。さようなら、カラディアエブリム」

 親しい友人のように、彼の名を呼ぶことは、もはや決してない。

「ちょっ…」

 慌てて延ばされようとした手を。

 桃は、ピシャリと払った。

 これまでは全てよけたが、ここで初めてカラディに触れたのだ。

 決別のために。

 驚く彼を置き去りに、彼女は早足で歩き始めた。

 ピューイ。

 ソーが鳴く。

 この相棒が、尾長鷲であることを教えてくれたことだけが──カラディに出会って良かったことだった。