アリスズc


 東の港へ向けて旅立った桃が、最初に気づいたのは──鳥だった。

 大きい鳥が一羽。

 偶然だろう。

 きっと偶然だ。

 偶然に違いない。

 そう思いはしたが、どうにも毎朝その鳥が近くにいるのだ。

 彼女が、ちょっと無理して夜も歩こうとしたら、鳥目のくせに、あちこちぶつかりながらもついてこようとする。

 それで、確信した。

 この鳥は、桃についてきている。

 うーん?

 鳥に、知り合いはいない。

 鳥を寄せるような、動物的才能も自分にはないはずだ。

 だが。

 鳥に知り合いがいそうな人間には、ほんの少しだけ心当たりがあった。

 コーだ。

 木の上で鳥の声がしたかと思ったら、彼女だった。

 そんな話を母から聞いた時は、ただの笑い話程度だと流したが。

 よくよく考えると、鳥と同じ鳴き方が出来るということは、鳥と同じ言葉をしゃべっているということではないのだろうか。

 人の言葉を母から習うように、彼女は鳥や獣の言葉も覚えたのかもしれない。

「コーに頼まれたの?」

 桃は、木の上のその鳥に語りかけた。

 濃い褐色と羽に、灰色の胸。

 金色と黒の丸い瞳と、強そうなくちばし。

 逃げはしないものの、まばたきをしながら首をかしげるだけ。

「そっか」

 桃は、照れくさくなった。

 自分はいつのまにか、コーに心配される立場になってしまったのだ。

 こっそりと、鳥の友達をつけられてしまうほど。

 そして、桃は。

 一人と一羽の旅となった。

「ソーさん、今日も張り切って行きましょうか」

 名前がないのも寂しく思い、彼女は鳥に呼び名をつける。

 相変わらず、思いついたままの名前の付け方だった。