∠
「お前の母は…お前をイデアメリトスにした」
本来ならば認められないことを、オリフレアの母は強引にねじ込んだのだ。
「お前が望んだことを叶えるために、お前の母は、荘園をひとつ売り飛ばした。お前の父にするイデアメリトスの傍系のジジィを買収するために」
『当時、私はまだ何でも自由に調べられる年齢や立場ではありませんでした』
ヤイクは、言った。
彼の叔父である賢者や、梅サイドから漏れ入る情報。
そして。
ヤイクのしつこいところは、大人になった時、自分が子供の頃に理解できなかった事象を紐解いて、改めて飲み込み直すのだ。
「お前の母は、無茶をした。無茶には、代償がつくものだ」
気丈にこちらを睨みつけるオリフレアなど、わずかも恐ろしくはない。
「前太陽を説得する代償が、一番大きかった…」
父と違って、祖父は良い意味でも悪い意味でも、見事なイデアメリトスだ。
横車を押してくる妹など、本来歯牙にもかけるまい。
前太陽の出した要求は。
「月の連中の命を、2千」
テルは、指2本を立てた。
「これが、前太陽が課した、お前をイデアメリトスにする条件だ」
旅の間に出会ったあの連中を、2千!?
途方もない数字に思えた。
「2千もの月の人間を呼び寄せるには、どうすればいいんだろうな?」
テルは、全部は言わなかった。
自分をエサにしたのだ。
そして、かの女性もまた、魂の底からイデアメリトスだった。
娘に、甘ったるい愛など囁くことよりも、敵を倒すことにより愛を成就しようとしたのだ。
「お前の母は…何年もかかってやり遂げたぞ」
見事な、生き様だった。
「し…」
オリフレアは、ぶるぶると震えている。
濃い褐色の肌が、傍から見てはっきり分かるほど青ざめているのだ。
「し…知らない、知らない知らない! そんなこと知らない!!」
ヒステリックな悲鳴が、彼女の部屋をこだまする。
「いちいち、そんなことをお前に言うか、馬鹿」
テルは──ひどい男だった。
「お前の母は…お前をイデアメリトスにした」
本来ならば認められないことを、オリフレアの母は強引にねじ込んだのだ。
「お前が望んだことを叶えるために、お前の母は、荘園をひとつ売り飛ばした。お前の父にするイデアメリトスの傍系のジジィを買収するために」
『当時、私はまだ何でも自由に調べられる年齢や立場ではありませんでした』
ヤイクは、言った。
彼の叔父である賢者や、梅サイドから漏れ入る情報。
そして。
ヤイクのしつこいところは、大人になった時、自分が子供の頃に理解できなかった事象を紐解いて、改めて飲み込み直すのだ。
「お前の母は、無茶をした。無茶には、代償がつくものだ」
気丈にこちらを睨みつけるオリフレアなど、わずかも恐ろしくはない。
「前太陽を説得する代償が、一番大きかった…」
父と違って、祖父は良い意味でも悪い意味でも、見事なイデアメリトスだ。
横車を押してくる妹など、本来歯牙にもかけるまい。
前太陽の出した要求は。
「月の連中の命を、2千」
テルは、指2本を立てた。
「これが、前太陽が課した、お前をイデアメリトスにする条件だ」
旅の間に出会ったあの連中を、2千!?
途方もない数字に思えた。
「2千もの月の人間を呼び寄せるには、どうすればいいんだろうな?」
テルは、全部は言わなかった。
自分をエサにしたのだ。
そして、かの女性もまた、魂の底からイデアメリトスだった。
娘に、甘ったるい愛など囁くことよりも、敵を倒すことにより愛を成就しようとしたのだ。
「お前の母は…何年もかかってやり遂げたぞ」
見事な、生き様だった。
「し…」
オリフレアは、ぶるぶると震えている。
濃い褐色の肌が、傍から見てはっきり分かるほど青ざめているのだ。
「し…知らない、知らない知らない! そんなこと知らない!!」
ヒステリックな悲鳴が、彼女の部屋をこだまする。
「いちいち、そんなことをお前に言うか、馬鹿」
テルは──ひどい男だった。


