アリスズc


 月の血を持つこの二人は、本当は鳥の血筋ではないのかと桃は思った。

 桃には分からない音で、二人は会話している。

 言葉というものは、彼らが表現したいものを、普通の人に伝えるための分かりやすい手段にすぎないのだろうか。

 桃は、畑の側によいしょと腰かけて、離れた二人の間で交わされる音を、少し遠い気持ちで聞いていた。

 寂しいなあと思うのは、桃のエゴ。

 彼女は、この二人のこの会話には、決して入ることが出来ない。

 二人がどれほど、自分を特別に思ってくれたとしても、根本まで分かりあえるわけではないのだ。

 ただ、今は。

 トーの気持ちを、大事にしたかった。

 きっと彼は、二度と同胞と穏やかな会話をすることはないと思っていたはずだ。

 けれど、そうではなかった。

 太陽への恨みも何も吹き込まれなかった、ある意味生まれたての赤子のようなコーは、その経過こそ不幸なものだったが、結果的にトーに奇跡をもたらしたのである。

 耳が慣れてくると、さえずりの中に、ほんの一瞬、拾えそうな音を感じる時がある。

 もしかしたら。

 物凄い早回しで、言葉をしゃべっているのかもしれない。

 普通の人間では、とても聞き取れないほどの速度で。

 もし、そうだとしたら。

 このほんの短い間に、どれほどの話がかわされているのだろう。

 さえずりが。

 止まった。

 コーの声の後に音が切れた。

 黙ったのは──トーだ。

 桃が、立ちつくす彼を見上げると。

 トーは。

 泣いていた。

 コーが、とことこと近づいてくる。

 泣いている姿に、首を傾げた彼女を。

 トーは。

 強く。

 抱きしめた。