アリスズc


「私は…母と肌の色が違う。父とも違う」

 リリューの母も父も、言葉はそう多くない。

 必然的に彼も、多くの言葉を必要としなかった。

 そこには空気があって。

 その空気が、リリューに人の気持ちを伝えてくれたからだ。

 だが、いま目の前にいる彼女からは、何も伝わってこない。

 その真意が、何なのか。

 嘘つき。

 彼女の言葉に、迷いはなかった。

 故郷を出てなお、故郷の色を残す自分が嫌いなのだ。

 誰ひとりと、彼女のその色を受け入れなかったからか。

「私は、両親の本当の子じゃない」

 それは――悲劇の言葉じゃない。

 ただの、事実。

「父は言った。この肌の色は、故郷が私を覚えてくれている証拠なのだと」

 話しながら、リリューは思った。

 いつか。

 そう遠くないいつか、故郷に行こう。

 自分の血が覚えている海を、見に行くのだ。

「私は…その故郷の色が嫌いなのよ」

 彼女は、怪訝な声を返す。

 リリューの意図が、分からないのだ。

 そんなこと。

 自分にだって分からない。

 ただ、彼女の色が故郷特有のものなら、リリューのもそう。

 その色が、周囲に受け入れられたかどうか。

 違いは、それだけ。

「私の周りは、色でとやかく言う人間などいない」

 この家のバカ息子の言葉が、どれほど彼女を傷つけたかは分からなかった。

 だが、そんな人間ばかりではない。

 世界は、広い。

 その広さをまだ──彼女は、知らないのだ。