アリスズc


 ハレたちは、既に帰路についていた。

 太陽の木との対面は、二日で終わったのだ。

 セルディオウルヴ卿の孫娘──ジリアンは、ハレとホックスの好奇心を満足させた。

 彼女は、小さい時から曽祖父と太陽の木を育てていて、その成長記録を書面で残していたのだ。

 絵心のある子供だったのだろう。

 木の特徴を、それぞれの年ごとに絵で描いていた。

 母は、とても植物を愛しているが、残念ながら絵心はないようで。

 頭に焼き付いている植物の特徴や姿を、絵で表すことが出来ないのだ。

 学術的な絵を描ける人間も、これから必要になるだろう。

 植物だけではなく、建築、文化。

 その細部の記録を残すには、文字だけではどうしても限界があるのだ。

「殿下の母上と、話が合うのではありませんか?」

 ホックスが、ジリアンのことをそう評した。

 ハレも、そう思う。

 だが、太陽妃という立場の母が、遠距離の彼女の元を訪ねることは難しいだろう。

 逆ならば、可能かもしれない。

 ジリアンを、都へ招待するのだ。

 この国でただ一人の、太陽の木の専門家として。

 そんな彼女に、もっと太陽の木への造詣を深めてもらうために、ハレはひとつ伝えてきたことがあった。

 ジリアンの行動力と、祖父の甘さがあれば、近いうちにそれは叶うかもしれない。

 ハレは。

 そう、思っていた。

 近いうちに、と。

 だが。

「追いつきましたわ!」

 彼らを追い越そうとした荷馬車の後ろから、ジリアンがひょっこり顔を出したのだ。

 祖父の甘さは、ハレの予想を遥かに上回っていたのだろう。

「次の村ですわよね? お乗りになりません? そうですの。では、申し訳ありません、お先に失礼する無礼をお許し下さい」

 そして、風のように彼女の荷馬車は行ってしまうのだ。

 次の村。

 それは──太陽の花を、守る男の住む村。