アリスズc


「俺は、もう少し神殿にいる…都からの連絡が来るまでな」

 テルは、反逆のイデアメリトスを父に委ねるまで、残るつもりだった。

 日程的余裕はある。

 それに、いまの自分には──刀もあるのだ。

 実質、ヤイク以外は戦えるという強みがあった。

 ビッテやエンチェルクが、それをさせてはくれないだろうが。

「そう…私は明日には神殿を出ようと思っているよ。やりたいことと行くところがあるからね」

 向かいに座っているのは、ハレ。

 お互い、本当の年齢の姿になって向かい合っていた。

 それぞれの文官も同席している、ある意味公的な会見の場。

 これまでハレが、本当に何も鍛えなかったと分かる細さは、テルにしてみれば大丈夫かと思えるほど。

 中性的な、やさ男になってしまった。

 まあ、これはあくまでも自分の美的感覚からの評価だが。

「やりたいことに、行くところ…ね」

 しかし、頭の中身までやさ男になっていないのは、テルにだって分かる。

「そう。やりたいことの方は…出来れば、テルも一緒に来てくれないか?」

 ハレは、同席を求めた。

 ここからそう遠くないところで、何かをするつもりらしい。

「分かった」

 何をするのか、聞く気もなかった。

 テルにとって不利益なことではない。

 それだけは、間違いなかった。

 ならば、何が起きるか楽しみにするくらいの気概は、テルにだってあるのだ。

「ところで…」

 話もひと段落ついたところで、自分よりもヤイクが気にしていることを、口にすることにした。

「あの白いのと、結婚するつもりか?」

 ハレもヤイクも微動だにしなかったが、向こうの文官だけは表情を険しくした。

「白いのじゃなくて、コーだよ」

 最初に訂正をした後。

 テルの兄は。

「彼女もそう望んでくれるなら、そうしたいと思っているよ」

 いけしゃあしゃあと、そんな答えを返したのだった。