アリスズc


 夫人の部屋を出ると、テルは二人の青年と対面した。

 二人?

 テルは、一瞬彼らが何者であるか判別できなかった。

 一人は二十歳すぎ。

 もう一人は、もう少し若いか。

 二人とも髪を伸ばし、貴族然とした姿だ。

 どちらかは、おそらく夫人の養子なのだろう。

「初めてお目にかかります…クージェリアントゥワス=イエンタラスー=ロクオワヌリフと申します」

 二十歳すぎの男が、テルに見事な礼をした。

 華やかな気配は十分だが、少々鼻につく感じがある。

 イエンタラスーを名乗るのだ。

 この男が、夫人の養子なのだろう。

 では。

 もう一人は、誰なのか。

「たったいま到着したばかりで、お見苦しい姿で申し訳ございません」

 見苦しさなど、テルは微塵も気づいていなかったが、若い方の男はさっと立ち姿を改めた。

 瞬間的に。

 テルは、誰かに似ていると思った。

 とても高い背丈。

 柔らかそうな濃い栗色の髪。

 だが──まっすぐに見つめてくる瞳。

「エインライトーリシュト=テイタッドレック=キルルスファイツと申します」

 若いが、風格を感じさせる青年だった。

 テイタッドレック。

 イエンタラスー家の北側の領主の名だ。

 若い後継ぎ同士、交流があるのだろう。

 テルはその程度に、理解していた。

「テイタッドレック卿の…」

 反応したのは──ヤイク。

 その声には、好意的なものというよりも、怪訝がたっぷり含まれている気がした。

「お父上はお元気ですかな? 相変わらず、剣など振っておいでか」

 たっぷりの毒を含ませ、ヤイクはゆっくり問いかける。

 どうやら、彼はかの領主が好きではないようだ。

「はい、相変わらずです。都から刀が届いてからは、なおのこと日々鍛錬しております」

 ヤイクの毒を受け流しながら、静かにエインは笑みを浮かべた。

 刀?

 ああ。

 キク関係の人間か。