「莉那」
利香は廊下を歩いている莉那を呼び止めた。
莉那は足を止めた。振り向かないままだった。
「莉那。ちょっと・・・」
莉那はそのまま廊下を歩いていった。
まるで私達の話が聞こえていないみたいに。
「ちょ・・っと、待って」
すたすたと歩く莉那。
「逃げるの?」
さすがの私も腹が立って言葉が出てしまった。
大声にびっくりしたのか莉那も足を止めた。
「利香があんたと、ちゃんと向き合いたいって思って言ってるのに・・・。みんなが演劇を楽しんでほしいって・・・。一人でも気分を悪くしてる子がいると嫌なんだって!!!!ちゃんと話聞いてあげなよ!!あんた最低!!!」
すると莉那が始めて口を開いた。
「何で?いっつも主役の先輩達に何が分かるんですか?あたしはみんなより練習も頑張ってるのに。あたしだけ、嫌われて。先輩達に何が分かるんですか?!あたしの事なんてほっといてください」
「あんたまだ分からないの?利香は、あんたの演技が大好きなんだって!!!!!だからほっとけないの!!!」
莉那は走って行ってしまった。
「あいつ~!!!!!」
追いかけようとした。でも利香が私の肩を掴んだ。
「いいよ。大丈夫」
「でも・・・」

