「花沢さん」店長がこちらに来る。
「ゲストがそろったわ。始めていい?」
「はい」
 彼と顔を見合わせ、私は返事をした。


 ゲートに彼と二人で立つ。ゲストに囲まれた、祭壇までのバージンロードに向かって、私たちは手を取り合い、そこへ向かって一歩づつ歩き始めた。
 ふかふかと柔らかな芝生は優しく足音を吸収し、踵が鋭い音を立てる事はなかったが、それでも私は一歩ごとにカツオを思った。カツオ、どこにいるの?私たちは運命の赤いワイヤーで繋がってるんじゃなかったの?ビッグになって迎えに来るって、どこにいても見つけ出すって言ったじゃない。早く来て、私の手を掴んでさらって行きなさいよ。もう今来ないと、二度と手の届かない場所で、カツオじゃない人と幸せになっちゃうよ。


 風船で彩られたゲートには、あの日手渡された赤いワイヤーが掛っている。
 場違いな現実感を、湛えながら。

《終り》