翌日。朝起きると、ボーッと部屋の壁を見た。しかし、けっして壁の模様が美しいワケでも、イケメンのポスターがはってあるわけでもない。
 私の父は公務員だが、さほど稼いでいない。母も弁当屋でパートをしているが、少々家計を助ける程度。そんなワケで、今だ築40年の官舎暮らし。勇太の住んでいるマンションと比べると、雲泥の差。特に壁はすすけていて汚い。日によっては、どーんと気分が沈む。とても見ていて楽しいモノではない。
 でも、今日は沈まない。と言うより、頭の中は勇太の事ばかり浮かび、他の事を考えられない。
 昨日見た勇太の笑顔、真剣な顔、ふざけた顔…どれをとっても魅力的だった。間近で見られて、本当に幸せだった。
(勇太君、カッコ良かったなぁ、優しかったなぁ。麗が言ったようなお高くとまっている事は、ぜんぜんなかったなぁ。ああ、私このままじゃ、勇太君にどっぷりハマっちゃう!)
ハアと甘いため息をつくと、もう10回くらい思い返した、昨日あった事をまた思い返した。
「そうだ!昨日撮った写真、まだ残してあるんだった!」
ふと思いついて茶の間へ行き、隅においてある棚からデジカメを取ってくれば、写真を見た。昨日撮った写真は勇太のパソコンに全部入れてきたが、メモリーからは消していない。まだちゃんと残っていた。
 1枚1枚、ウットリしながら見た。何度見ても勇太はカッコイイ。すると、ブログの方もまた見たくなった。
 ブログは昨日、予定通りある程度記事を打って帰って来た。残りは携帯電話のメールで打って送り、仕上げは勇太に任せた。すると昨晩、夜10時頃、完成したと連絡があり、慌ててパソコンを開いた。
『うわぁ…』
私の注文した、優しくて、でもクールな雰囲気は、すっきりとした画面構成と、青、白の配色により見事に表現されていた。ブログのパーツや写真も効果的に使われていて、まるで芸能人のブログみたいだった。