「はいはい、どうせお店は暇ですよ……って、せっかく、いい物やろうと思ったのに、止めようかなぁ」

店長が、ちょっと拗ねた口調でそう言った。



「えっ、なんですか? 今日も花火大会に行きたいのを我慢して、バイトを頑張ったんだから、もらえる物は頂きます」

槙原くんがそう言うと。



ポン

店長は背中越しに隠していた『何か』で、槙原くんの頭を叩いた。



「おまえは花火大会に興味無いだろうが。でも、まぁ、それやるから2人で仲良く分けてしろよ」

槙原くんが不思議そうな顔をして、自分の頭上にあった物を受け取って見た。



「あれっ? 花火?」

「今日の日中、小さな子供が間違って袋開けて、母親に怒られて大泣きしてさぁ……母親は買い取るって言ったけど、断ったんだ。でも、もう売り物にならないから、おまえらにやるよ」

槙原くんが今持っているのは、ちょっと袋が破れた花火セットの一番大きい物だった。



店長の言葉に、槙原くんが私を見た。



「せっかくだから、今からやんねぇ?」

「えっ? 今から?」



営業時間は21時までだったので、今は21時15分。