そして、３月。
買い物で顔を出しても、槙原くんから『話がある』とは言われ無かった。
やっぱり、あの話は無くなったんだろうね。
でも、槙原くんのバイト最後の日には挨拶したい……そう思って、事前に予定を聞いていたのに、最終日だと思って行った日、そこに槙原くんの姿は無かった。
実は他のバイト仲間の都合で槙原くんとシフト変更した為、１日早く辞めてしまったらしい。
そうなってから、私は重大な事に気が付いた。
私……槙原くんの携帯の番号もアドレスも、知らない。
いつもバイトに行けば会ってたから、そんなの必要無かった。
会えなくなって初めて、私と槙原くんを繋ぐ場所は、ずっと長い時間を過ごしたあのバイト先だけだったと思い知らされた。
私達の仲が良かった事を知っている店長が、４月から槙原くんは東京本社へ３年間行く事になったらしい、と言う情報を教えてくれた。
もう、ページェントの時みたいに、偶然会う事すら出来ないんだね。
