べガとアルタイルの軌跡

落ち着け、私!

今の言葉は、七夕と私達を引っ掛けた冗談だからね?

『織姫』と『夏彦』が夫婦なのは、七夕の話。

私は『伊織』……『織姫』じゃない。



「サンキュー」

槙原くんは、そう言ってプレゼントを受け取った。



「俺はさりげなくやってたのに、俺の誕生日にお返しが無いから『忘れてるんだなぁ』と思ってたんだ」



えっ?

嘘、じゃぁ、あれって……。



実は毎年、私の誕生日に槙原くんは、私がその頃好きなお菓子なんかを、必ずくれたんだ。

槙原くんは知らないと思っていたから、私だけ勝手に『誕生日のお祝いみたい』と嬉しくなってたけど……。

まさか、知っててくれてたなんて。



「後で車に戻ってから開けてみるよ」

槙原くんはそう言うと、自分のポケットに入れた。