べガとアルタイルの軌跡

「確かに、有り得ねぇーなぁ。今度、俺がビシッと品出しの極意を伝授して、『バイトだと思って、仕事なめんなよ』ってとこ、教え込んでやるよ」

「ありがとう」



私はいつも、こうやって支えてもらって気持ちが楽になっていた。



「気にすんなよ?」

「えっ?」

「俺にはなんでも言え……って事。溜め込んでると、円形脱毛が出来るぞ」



そう言って槙原くんは、視線は前を見たままで左手を伸ばしてきて、私の頭を1回撫でた。



ドキン



ねぇ、なんで?

今まで何人か女の子のバイト仲間と接している槙原くんを見てきたけど……必ず距離を置いてるし、こんなふうに触れてるのを見た事無いよ?

ううん……。

私はバイト先での姿しか知らないから勘違いしそうだけど、フレンドリーな人だから、学校とかでも女友達とこんなふうに接しているのかもしれないよね。



私がそんな事を考えていたら、車が止まった。

辺りは真っ暗。



「ここ、名取川の河川敷。前に芋煮会をここでした事あって、ちょうどいいなぁと思ってたんだ」

そう言うと槙原くんは車を降りた。