べガとアルタイルの軌跡

そして8月8日が槙原くんの誕生日だったのを思い出して……尚更、ドキドキが止まらなくなった。

自分の誕生日だよ?

その日の夜に、わざわざ私を誘うって……どう言う意味?



一瞬、そう思ったけど……深く考えるのは止めた。

深く考えると、この居心地のいい関係が壊れてしまいそうで、なんだか怖かった。

そして、単純に誕生日をお祝いしようと思い、約束をした。



21時30分。

わざとみんなが帰った頃の時間に待ち合わせ。

槙原くんが趣味のバイクを積む為に持っている、白のワンボックスの車がスーパーの駐車場に入って来た。

ドキドキする気持ちを、押さえ付けるのが精一杯。



「お疲れ様〜」

車から降りて、槙原くんは私にそう言い、私の好きな缶コーヒーを渡してくれた。



「ありがとう……あの、槙原くん」

「あっ、まず移動しよう。汚い車だけど、乗って」



私の言葉を遮り、槙原くんは助手席のドアを開けてくれた。