「な…なんで?」



いきなり…どうしたの?



『篠原』なんて呼ばれたのは久しぶりで、私はかなり動揺してしまった。



でも…
なんか、戻ったみたい。



あの『杉田先生』に恋してた、高校生の頃に。



「…ん?お前が昔の話するから…つい、な。」



「……先生─」



あ…



昔のことを思い出して、突然『篠原』って呼ばれて、つい私も懐かしい呼び方をしてしまった。



「うわ…懐かしいな、それ。」



背後から抱きしめられたままだから顔はよくわからないけど、声からして、嬉しそうにしてるのは伝わってきた。



「いつも…呼ばれてるのに?」



「バ〜カ。あいつらとお前とは、全く比べ物になんないよ。」



あいつらって…



「たまにはいいな…昔を思い出すのも。悪いことばっかりじゃないし。…どっかの誰かさんのおかげで、さ。」