その途中で、会田(あいだ)先輩の姿が目に入った。



背が高く、その上手足も長く整った顔立ちで、少女マンガなんかに出てきそうなタイプなんだ。



「よぅ!」

 そう、すれ違う瞬間に微笑む先輩に声をかけられた。


「急いでるから、手短に」

 さえぎるようにして、唯は言った。


「はいはい」

 先輩は、小さな子をあやすみたいに、軽く唯の頭をなでた。



 先輩と唯は幼なじみだ。



 先輩とは、唯から紹介されたことがきっかけで付き合うようになった。


そうでもなければ、先輩と付き合うことなんて、きっとなかった。



カッコイイうえに、陸上部で好成績を残す先輩は、女の子から人気がある。




 一方私はといえば、目は大きいけどたれ目だし、鼻も高くないし、スタイルもいい方ではない。



髪型だって、肩にかかるくらいの重たいストレートだし。



普通の何のとりえもない私とは、釣り合いがとれていないような気がしてしょうがなかった。



そもそも、先輩が私を気になったきっかけだって、小学生の頃にすごく可愛いがって飼っていた文鳥に似ていたかららしい。



「しかし唯の体型って、何か微妙だよなぁ」

 先輩はからかうように言った。


「ちょっとぉ!

これでも痩せたんだから!!」

 そう、険しい表情で唯は言った。


「やっぱ、遥ぐらいの体型がちょうどいいよなぁ」

 先輩はまだ懲りずに、言っている。



 唯はそれから、曇った表情をして黙ってしまった。



モテるのに…いや、モテるからかな。



女の子が、どれくらいそういう言葉を、気にするのかも考えていなそうだ。


「そんな言い方、しないでください。

唯がどれだけ頑張って、ダイエットしてると思ってるんですか」

 力んで言ったその言葉に、先輩は少し驚いて言った。


「ごめん、ごめん。

帰り、待ってて」

 先輩の言葉に、私はうなずいた。