扉を開くと目の前にはうっそうと木々が生い茂り、月明かりさえも受け付けようとはしないようだ。
梟が鳴き、暗闇は深くなるばかり――――
木々の間をくぐり、森の奥深くへと歩みを進めると、梟や虫の音だけではなく、バイオリンの“音”が聞こえてきた。
真夜中にこの妖魔の多い國でバイオリンを弾くなど命を削る行為。
妖魔がよってくる可能性が高い。
薫は音のほうへと走った。
どんどんと音ははっきりとしてくる。
バイオリンの音はメロディーを奏でるわけでもなく、ただ、でたらめに音を鳴らしている。
音を調節しているのだろうか?
気づくと木々は消え小さな草原のような場所にたどり着いた。
そこだけ月明かりが入り、明るかった。
中央に岩があり、そこには男が立ち、バイオリンを弾いていた。
薫の存在に気づいたのか、男は岩に座った。
男の傍により、じっくりと姿を見た。
男は黒い髪と瞳で気だるそうに薫のことを眺めていた。この者が人がアスベルの民と物語っている。
まさか…
「こんな夜に音を出してはいけない。妖魔を呼び寄せてしまいます。」
「手」
いつの間にか隠し持っていた剣まで伸びていた手を止め身体を硬直させた。冷や汗は止まらず、ただ額を濡らすばかりだ。
心臓はどくんどくんと鳴り、心臓が飛び出てしまうのかと思った。
男はその後は何も応えずただただ薫を見ているだけだった。
「…は?」
突然少年は笑い出し、一気に身体の力が抜けた。
だが少年はまた黙り森の奥へと目線を向けていた。
ぞっと背筋が震えた。
妖気を感じる――――

