よかった、意識はある。 でも、香奈枝自身、起こったことがわかっていないようだ。 「よくわからないけど、今…」 紗希はそこまで言って、口をつぐんだ。 香奈枝が気づいてないなら、言わない方がいいよね? 幽霊が自分の体を通り抜けたなんて、ショックに決まってる。 「今…?」 香奈枝は紗希を見上げた。 「う、ううん。何でも――」 ないと言おうとした時、また声が聞こえた。 『絵…里』 紗希達は一斉にふり返って、息を飲んだ。 立ちつくす先生の目の前に幽霊がいる。