実際、彼はまだ、幽霊の姿を見たことはなかった。 今日も、何もなく終わるはずだ。 そう思いながら、ライトで廊下の先を照らした。 浮かび上がる廊下の様子。 壁と窓、教室の扉。 どこもおかしいところはない。 ほら、幽霊なんているわけないんだ。 ホッとひと息ついた時――、 …ヒタッ。 男の背筋が凍った。 今… どこから…足音が、した?