「あのっ……今りみが言ったことは…っ」 勇気をふりしぼって声を出したあたしの方を、コウキさんは見なかった。 冷やかな顔で、前を見たまま言った。 「別にいいんじゃん? 浮気でも遊びでも何でも。本人の勝手だし」 「コウ……」 「でも俺はそーゆーの無理だから、他あたって」 「……っ…」 心臓が、握りつぶされたみたいに痛い。 ゆっくりと発進する車。 旅館に着くまで、そして着いてからも、あたしたちが言葉を交わすことはなかった。