プチ遭難から無事に脱出。 階段に置きっぱにしていたあたしのカバンを、コウキさんは何も言わず右手で持って 左手は、ずっとあたしとつないでくれた。 ふたりの服からポタポタと落ちる水滴が、道路に点線を描いていく。 少し離れた駐車場に、コウキさんの車がとまっていた。 車内が濡れることをあたしは気にしたけど、コウキさんは「いいから」と言ってドアをあごで指した。 ……バタン。 初めての助手席。 ふたりきりで車に乗るのも、初めてだ。