その日の夜、初めてカズくんとふたりきりになった。


カズくんを呼び出してくれたのは、もちろんコウキさんだ。



「アズちゃん、おまたせ」


旅館の屋上で待っていたあたしに、カズくんが小犬っぽい笑顔で近づいてきた。



「座ろっか」


そう言ってカズくんがベンチに腰をおろす。

あたしもその横に、ちょこんと座った。



空には満天の星。

旅館の裏の山から、虫たちの鳴き声。