「あ、コウキさんの苗字は? あたしたち、“コウキ”しか聞いてないよ」 「碓氷(ウスイ)」 開けた窓にひじをついてコウキさんが答える。 ……ん? ウスイって……。 「もしかしてあの旅館と同じ?」 あたしがたずねると、シレッとうなずくコウキさん。 「俺んちだから」 「えー、じゃあ若旦那じゃん!」 助手席でりみが驚きの声をあげた。 ……そっかぁ。てっきりバイトだと思ってたけど違ったんだ。 すごいなぁ、こんなイケメンで、おっきな旅館の後継ぎで。