出会い・白輝伝


「白蛇(はくじゃ)」
とその者を呼び、
じっと目前の空間を
凝視する。

やがて何も無い空間が、
ゆらりとゆらめきその
中心部より白い指が見え
続いて窓から身を乗り
出すように少女の
上半身が現れた。

「なんじゃ‥夕餉の
支度で忙しいと言うに。
道草などせず早よう帰れ」

洸が語り掛けるより
早く言いたい事を言い
捨て再び空間に戻ろう
とする少女の長い黒髪
をはっしと握り洸は
懇願した。

「白蛇お願い‥助けて」

「妾は忙しいと
言うておるのに」

「ご飯は霞兄が、作る
じゃないか‥力貸してよ~」

「霞はおらぬ」

事情が掴めずキョトン
とする洸に父と兄が
封気の仕事で、出掛けた
と白蛇が説明をする。

「それじゃ‥オレ
今夜ひとり、ラッキー」

白蛇の説明を聞き
終えた洸の返事は
喜びに溢れていた。

ズイッと蛇眼の少女が
白い手を伸ばし洸の
耳を掴みねじる。

「イタタ‥痛いよ。白蛇」

「絖守が居ないと
夜更かしするつもり
じゃろうが、今夜は
妾が見張りじゃ。
寄り道などせず早よう
帰って来い。来ないと
~仕置きじゃ」

薄笑いを浮かべ少女は、
洸の両頬を左右に
強く引っ張る。