待って、落ち着け、あたし。 ちょ、おかしいってこんなの。 「何者かと、聞いている」 また幾重にも体に音をひしめいて響く、声音。 駆け巡る、不確かな鼓動。 駈け上がる、自身の息吹。 もう逃れられない鎖が、きつく身体に巻き付いた。 魔法でもかかっているの? 「ま、真空…人間」 そう呟くしか、できなかった。 円型の月は、沈黙してその光景を覗いている。