「なんでうちの高校って生徒手帳にイニシャルいれなきゃなんないわけ?」
「ほんそれ。あたしら完全疑われる組っしょ?美波を敵に廻すなんてどこのどいつよ。」
イニシャルSたちが口々に本物のSを罵っている。彼女が聞いてるとは知りもせず、かれこれ三時間は罵っている。まさかSが聞いてるとは誰も予測していない。
(うるさいやつらね。いいじゃない、彼女いたらアピっちゃいけないわけ?自信ないだけでしょ。それに悪いのはあたしだけじゃない。峰内だって拒まなかった。美波、あんたがガード固すぎんのよ。)
「ごめんね雫、待った?」Sは不意を突かれた。Sの不意を突けるのは一人しかいない。
「待ってないよ、美波。」(待ったに決まってんだろ、バカ女)
「それで話って?」
(ここは様子を窺おう)
「放送聞いてたでしょ?柊斗とどうすべきかな?」
(なんでこんなにしおらしいんだ?あんたらしくないじゃない美波)
「私にはなんとも言えないよ。二人の問題でしょ?余計な口を挟んじゃダメかと思うし…」
(なかなかいい台詞かも。あとでメモっとこっと)
「そっか…たしかに余計な口挟んじゃないけどくっつけはしたよね。」