与一は心の中で驚喜した。
これは良い情報だ。

「出かけるっても、お稽古事だけどなぁ。下駄屋の店が開く少し前から、店が閉まって少しするまで、出っぱなしだぜ。こりゃあ、亭主の趣味に感づいてるな」

「店にいたくないってか?」

三郎太は頷いた。

「あそこはきっと、表は下駄屋、裏は出会い茶屋だぜ。しかも、男専門のな。そんなとこに、若いご新造が、いたいわけねぇだろうよ」

与一は口をあんぐり開けたまま、三郎太の話に聞き入っていた。

「・・・・・・なんでお前は、そんなに詳しいんだ?」

ちょっと引きながら与一が問うと、三郎太は途端に大声で笑い出した。

「おいおい。何警戒してるんだ。前にも言ったが、俺にその気(け)はないぞ。でもな、そういう方面の情報なら、結構掴んでるんだな」

にやりと笑い、再び顔を近づけて、三郎太は声を落とした。