「ああ、あの下駄かぁ。そりゃお前、この千秋屋のお嬢さんだぜ。下手なもんは、贈れないだろ」

「うん、いや、だから」

「お嬢さん、そりゃあ喜んでくれたぜ。いやぁ、男色家とはいえ、辰巳には感謝だな」

「そうか。それは良かったな。で・・・・・・」

「何せ辰巳に頼もうと思ったら、一月前からお伺いをたてないといけないんだぜ。幸い俺は、ここの旦那さんの下駄とかを昔から作ってもらってたから、一応上客だし、覚えてくれてたけど」

・・・・・・いきなり行ったが、何か向こうから積極的に客引きされたけどなぁ、と思い、与一は‘客引き’という言葉に、改めてぞっとした。

「た、辰巳って、そんなに人気なのかい」

さりげなく粟肌立った腕をさすりながら、与一は三郎太に言った。