待っている間、与一は店の中を観察した。

女性に人気というだけあり、店内は綺麗に清められ、清潔感が溢れている。
店先に目をやると、お客を迎えに行くのだろう駕籠と、帰ってきた駕籠が、ひっきりなしに出たり入ったりしている。

噂に違わず、繁盛しているようだ。

感心していると、奥の暖簾を勢い良く跳ね上げて、三郎太が出てきた。

「おお、どうした。わざわざ訪ねてきてくれたのか」

笑いながら、屈んで与一の肩を叩き、奥へ入るよう促す。

「いいのか? 仕事中なんだろ?」

「いいって。お前が店先にいちゃ、商売にならねぇ。ま、ここに来るのは、お使いの坊主とかがほとんどだけどな。たまに、ここから乗りに来るお嬢さんもいるし、見目良いお前さんは、奥に引っ込んでたほうが、こちとら有り難ぇや」

与一からしたら、わけのわからないことを言って、三郎太は暖簾をくぐった。
与一も後に続く。

暖簾の奥は、駕籠付き場になっており、その駕籠付き場を取り囲むように、ぐるりと廊下が巡っている。
廊下から駕籠付き場に下りられるようになっている何段かの階段には、駕籠の担ぎ手が座って談笑していた。